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出会い・感動インタビュー

人も企業も「ありがとう」を 集めながら成長していく。-渡邉 美樹さん

今回のインタビューのお客さまは、ワタミ株式会社取締役会長の渡邉美樹さん。日本を代表する事業家として、独自の理念を展開しながら幅広い分野で活動されています。現在は、介護や弁当宅配(宅食)、環境など幅広いフィールドでも手腕を振るうほか、公益財団法人の代表理事としても発展途上国での学校建設や孤児院運営、さらには岩手県陸前高田市参与として、震災の復興支援活動にも尽力。そんな渡邉さんに、様々なお話をお聞きしました。

渡邉 美樹さん/ワタミ株式会社 取締役会長

1959年生まれ。明治大学卒業。経理会社、運送会社勤務を経て、1984年ワタミを創業。2000年東証一部上場。「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」という理念のもと、外食・介護・宅食・農業・MD・環境/メンテナンスなどの分野で、独自の労働集約型事業モデルを構築。学校法人郁文館夢学園理事長、医療法人盈進会岸和田盈進会病院理事長、NPO法人みんなの夢をかなえる会理事長、公益財団法人School Aid Japan代表理事、岩手県陸前高田市参与 等を務める。

渡邉 美樹さん

幸せに向かって。―提唱されている「ありがとうを集める」について、お願い致します。

まず初めに、私たちの考える自由主義社会の定義からお話しします。それは、単に商品やサービス、そしてその対価としてのお金が飛び交う社会ではなく、常に 「ありがとう」=感謝の気持ちにつつまれている社会。それこそが本当の自由主義社会だと定義しています。より多くの人に「こんな店があってよかった」、「こんなサービスがあってうれしい」と思っていただけることを実現していくのが、本当の意味での自由主義社会ではないかと思うのです。現在、ワタミグループは100年持続可能な企業を目指して邁進しています。その中でもお金や売上げより、「この会社があってよかった」と思っていただける人を一人でも多くつくるために努力していきたいと考えています。それが結果として、会社の成長・存続につながっていく。これは私たちのグループならではの 視点であり、強みであると考えています。
もう一つ、ワタミグループでは社員全員が共通の価値観を持っています。それはみんなが大きな夢を持って、 その夢に向かって進んでいること。夢の実現に向けたプロセスの中で、「ありがとう」を集めながら成長していく。この「ありがとうを集める」ことが最も重要 であり、人にとっても企業にとっても、大きな目的となるのです。そして、それこそが人間の幸せにほかならないのです。

渡邉 美樹さん

―「夢に日付を入れる」ことの大切さについて教えてください。

夢に日付を入れることは、私自身も実行していることの一つです。夢というのは何もせずに放置しておくと、そのまま消えてなくなってしまいます。夢をかなえ るためには、その夢に日付を入れ、現在と夢との差を明確にすることが不可欠です。しっかりと計画を立てて、今日やるべきことをきちんと済ませる。今日の現 実を変えることにより、明日が変わっていくのです。今日動かない人は、夢をかなえることはできません。多くの人は夢に日付を入れるというのは、目標設定をすることだと思いがちですが、そうではなくて今日の 行動を始めることです。一歩進めば、一歩夢に近づいていく。もちろん、夢を実現するための計画には、常に見直しが必要です。計画を見直しながら、修正しな がら、その着実性を高めていきます。大事なことは、自分の頭の中でイメージをすることです。イメージをすることで我慢も努力もできるようになる。そこでワタミグループでは手帳に5ヵ年スパン で計画を書き、そこから1年ごとの計画に落として、全社員が持ち歩いています。これにより、自分たちの夢に向かって歩んでいるという意識を高めます。もちろん、夢の実現には、あきらめない姿勢を持ち続けることが大切なことは言うまでもありません。

思いをカタチに。―事業を拡大していく中で、どんなことを重視してこられたのですか?

世の中の多くの経営者の方が陥りがちなものの一つに、全能感というものがあります。心理学の用語なのですが、たとえば何か一つの事業が成功すると、自分は 何をやってもできると思い込んでしまう。私は前進していくのは間違っていないと思いますが、それが相対的な目標設定(売上げ、社員数、資本金など)になってしまうと、失敗する可能性は高まると考えます。私は「日々、お客さまを大切にする」ことを、全社員に伝えています。私たちがやるべきことは、「より多くの、ありがとうを集めること」なんだと。それは別 に人数の多さではありません。たとえば、1人から1つのありがとうをもらって100人集めるよりも、1人から10のありがとうをもらい20人集めるほうが、より多くのありがとうを集められる。誰にでも、一目瞭然のことだと思います。介護事業を始めて、いま一番誇りに思っているのは、「ワタミの介護」で提供している食事が非常に多くの介護事業者に影響を与えたことです。私たちが参入したことで、日本中の介護施設の食のレベルが向上しました。それは1000の介護施設をつくるよりも、はるかに価値のあることです。この経験を踏まえ、やはり自分たちの思いをカタチにしていくこの重要性を確信しました。

―経営者として、あるいは人間として必要な心の磨き方とは?

自分は何のために生まれてきたのかというのを、自問自答しておくことでしょうね。たとえば人間は、人よりも有名になったとか、人よりも大きなことをしたからといっても、そんなことは少しも偉いことではないという価値観をしっかりと持っていることが大切です。自分は何をするために生まれてきたのかが分かっていれば、周りの目も気にならないし、判断を間違うこともないと思います。企業もまったく同じです。何のためにこの企業が存在しているのかという価値観を明確にすることが大事で、それは人間とまったく同じなのです。起業してから今日まで、様々な局面でアドバイスやサポートをいただいた方々への感謝の気持ちを忘れたことはありません。しかし、何よりも感謝という意味合いにおいては、自分の母親を挙げないわけにはいきません。私が10歳のときに亡くなりましたが、この世に自分を産んでくれたこと、そして10年の間に一生分の愛情を注いでくれたことに、大きな感謝の念を抱いています。母への感謝の気持ちは、自分の原点でもあります。もしもあのときに母親から10年間の愛情 を注いでもらえなかったとしたら、私は多分、経営者にはなれなかっただろうと思っています。

―前に進むために。―いま、一番関心をもたれていること、次の目標などを教えてください

渡邉 美樹さん

日本の将来に強い関心を持っています。日本はポテンシャルが高いにも関わらず、政治の舵取りの悪さや、財政への稚拙な取り組みにより、不安は募る一方で す。このまま行くと、高齢者や子どもたちなどにサポートが届かない国になってしまう。高齢者の方が幸せに暮らせる国、子どもたちが夢を語れる国にするために、いま非常に大事な局面だと感じています。その一方で、地球的な視点で物事を見ることも大切にしています。カンボジアの孤児たちや、バングラデシュの教育を受けられない子どもたちと触れ合うと、まずはその子たちを救わなければいけないという思いを抱きます。彼らを救える社会を早くつくるためには、教育への支援が必要です。今年2012年は、海外での教育活動に本格的に関わっていく年になると思います。
さらに大震災から1年、日本ではエネルギーも大きな問題ですので、今年はこの問題にも取り組んでいます。すでに秋田で風力発電事業に参入し、念願の風車が 回り始めました。この風車の出力は2,000kWで、ワタミグループ全体の電力使用量の3%に相当します。この風車の数を増やしていくことで、近い将来、グループのすべての電力を自然エネルギーでまかなう予定です。 再生可能エネルギーについては、今後も様々な可能性を検討していきます。

―最後に、お客様や企業に向けたメッセージをお願い致します。

外食産業から始めて、「ありがとうが集まる店」をつくりました。次は農業、安全で安心な食材を求めて有機農業に着手。事業経営に携わりながら、カンボジア やバングラデシュなどの発展途上国の子どもたちへの支援も実行。さらには介護事業、宅食事業、風力発電へと、活動フィールドはどんどん拡がっています。企業経営では何よりも変化への対応が必要です。経営というのは“変化対応業”なんです。必ず変化がある。お客さまが変わる、環境が変わる、仕入先が変わ る、競合相手が変わる、マーケットが変わる…、常に変わっていきます。それなのに、以前と同じ方法でやり続けたのでは上手くいくはずがありません。今までのやり方を“捨てる勇気”がないと、前に進んではいけないのです。多くの会社や経営者の方々が、業績不振の理由に不景気を挙げます。しかし、もうこの景気が普通であることを早く受け入れたほうがいい。その上で、変わり続 ける勇気を持ってください。そして常に10年、20年先からの視点で、現状を否定しながら前に進むことを実行すべきです。今までのやり方にこだわらない、捉われないことが不可欠な事項となるでしょう。

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