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出会い・感動インタビュー

他者を考えること、社会を考えること―人物のセレクション、そして記事や誌面づくりなど
「Japanist」のコンセプト、編集者としてこだわっている部分は何ですか。

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黒澤明監督の映画「醜聞」に、こんなセリフがあります。「大丈夫。記事なんて少しデタラメでも、活字になりゃ世間が信用するよ」。残念ながら人間には「幸 福な人間が不幸になっていく様子を見るのが楽しい」という性質があります。他人の不幸は蜜の味ということですよね。だからこそ週刊誌をはじめ、多くのメディアは他人の誹謗中傷や下世話なネタを執拗に掲載する。その方が売れるからです。私は「Japanist」を、これらのものとは正反対のメディアとして位置づけています。
すぐに採算が合いそうもない雑誌を社員全員で手がけるわけにはいきません。創刊から1年間は私一人で、2年目以降は一名のスタッフを加えた二人で、企画・取材・原稿・デザインなど全編集業務を行っています。アタマから最後まで自分が手がけるというのは大変なことですが、その雑誌のコンセプトを貫くにはこれが最善の方法であると信じています。
50歳になって初めて人生の師を得、私はある使命に気づかされました。それは「世の中にとっていい人、いい組織、いい動きなどを、自分なりの価値観で選択 し、自分なりの方法で表現し、より多くの人たちに伝えること」です。それを実現するために、これまでデザイン力や文章力を磨き、ネットワークを構築してき たのだと思いました。心がけていることは、主観と客観のバランスを大切にすること、説明だけに終始しない、表現する記事づくりを行うこと、そして過剰なデコレーションを避けたシンプルで美しい誌面づくりに努めることです。

―すでに、文化人をはじめ多くの方々が賛同されています。いま現在の「Japanist」の読者層などについて教えてください。

いわゆるマーケティング的な見地からのターゲット、年齢や職業、性別や年収などの一般的な分類はまったく考えていません。「Japanist」はそのような考え方から生まれた媒体ではないからです。あえて、どのような人に購読者になってほしいのかと聞かれたら、次のように答えています。私が想定しているのは、「その人の社会に対する意識の高さ」、その1点であると。
社会というものを考えてみてください。自分以外はみんな他人です。そんな他人である自分以外の人のことを、どれだけ真剣に考え抜くことができるでしょうか。他人のことを考えられるということは、社会に対して意識が高いということです。私は、「Japanist」の読者を、社会に対して意識の高い人と想定しています。数年前まで「一億総中流」と言われた日本人でしたが、今、急速に格差が広がっています。その源は「社会に対して意識が高いか低いか」だと思っています。言い換えれば、「自分のことしか考えていないか、世の中のことも考えられるか」。
「Japanist」は今後も社会に対して意識の高い人たちに向けて、よりよい情報をどんどん発信していきます。また、この雑誌は続けていくこと自体に、大きな意義があるとも考えています。大手出版社でも雑誌の継続発行が難しい時代の中で、独自の方法を貫きながら確実に読者を集めている媒体がある。そんな一つの事例になることも、「Japanist」の役割ではないかと思っています。

日本を知り、世界の異なる文化も理解する。―編集者として、あるいは人間としてでも結構です。
日々どのようなことを考え、大切になさっているのでしょうか。

あるものを得るには、時間がかかります。たとえば、本当の喜びを味わうには、さまざまなハードルがあるはずです。だからこそ、得られた喜びを真の喜びとして実感できるのです。ところが今は、何でもかんでもコンビニエンス、ショートカットで獲得するという風潮が蔓延しています。巷に溢れる自己啓発セミナーや自己啓発本なども、まったく同じです。自分を高めるという意味では批判されるものではありませんが、私には手っ取り早く成果を得ようとする行為にしか映りません。そんなお手軽かつ簡単な方法 で、本当に大切なことは見つからないと私は思っています。何度も回り道をして、それこそ山の向こう側まで行ったり来たりしながら山頂に昇るぐらいの覚悟で なければ、ものごとの本質は見えてこないでしょう。大切な根っこの部分を見つめないと、すぐに元に戻ってしまう。根っこというのは、歴史、文化、芸術、思 想、哲学、死生観、人間観などです。途中で失敗をしたり、人と意見が食い違ったり、あるいは少し上手くいって有頂天になって挫折したり…。さまざまなことを経験して行く中で、自分の得意なことや不得意なことを知り、経験を積み重ねていく。そのプロセスの中で、琴線のふれ合う人との出会いがあるはずです。それらが、確かなネットワークになっていく。この「神楽坂サロン」で開催している「ジャパニストの集い」も、そんな考え方から生まれたものです。紙媒体としての「Japanist」はネット空間やリアル空間へと広げていく接着剤であり、拡散器でもあるのです。

「Japanist」という媒体を通じて、「どのような人たちに、何をメッセージしていきたい」とお考えでしょうか。

「Japanist」は“自分が日本人であることに誇りを持つ”ことを目的として発行している媒体です。一人ひとりが誇りを持つためには、その根拠が必要 となります。たとえば正しい日本史を知ることや、日本人独自の感性やセンスを知ることもあるでしょう。あるいは日本人としての生き方を全うすることかも知 れません。私はアプローチの仕方は、できるだけ多いほうがいいと考えています。たとえどの国に行っても、胸を張って自分が日本人であること表明できる。これも「Japanist」です。そういう人が数多く存在する社会は、今よりも素敵な社会になると思います。そして日本のよい面を理解し、他国のよさもきちんと認める。異なる文化も柔軟に受け入れて、新しい価値観を創造していく。私たち日本人には、それができるはずだと信じています。
私個人としては先に述べたように、自分の表現=物語を書き上げたいと考えています。人間の持つ深さ、その多面的な世界の一面でも描き切った物語を編みたい。私にとってはそれを表現することが重要であり、極端に言えば、どういう形にするかとか、それがどういう結果を生み出すかということはさほど重視してはいません。最後は究極の自己満足でいい。そのためにこれからも学ぶ姿勢を持ち続け、さまざまな経験を積み重ねていきたいと考えています。

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