出会い・感動インタビュー
おもてなし、接遇の意味―スヴェンソンでは毛髪分野で培ってきた技術力を、医療分野にも活かしています。
兒玉 スヴェンソンでは1991年から年に4回、全社員を集めて全体ミーティングを行っており、’98からはそのうちの2回、各地域に密着したボランティア活動 をさせていただいております。各地域の病院へ出向き、患者さまのシャンプーやカット、道路掃除、献血活動などを積極的に行っています。聖路加病院でもボランティア活動を行っており、そこで医療用ウィッグを提供してほしいというお話をいただき、 がん患者さまのためのサポート事業に参入しました。がん治療による脱毛で家に閉じこもっていた患者さまが、ウィッグをつけて自信を持って外出できるようになり、明るく前向きになられたという話を聞くと本当にうれしく思います。元気になられて自毛も生えて、ウィッグを卒業された方もたくさんいらっしゃいま す。
里岡 私もウィッグを卒業した一人です。実は、6年前に乳がんを発症しました。女性のシンボルを手 術で一つ失い、さらに抗がん剤で髪の毛も失うということで、すごく落ち込みました。手術自体は同時再建手術が可能ということになったのですが、やはり抗がん剤によって髪の毛が抜け落ちていくことに大きなショックを受けました。でも、これは命との引き替えなので仕方ないと自分に言い聞かせ、それよりも過程を 楽しもうと思い、金髪をはじめいろいろなウィッグも試しました。
―里岡さんは接遇のプロでいらっしゃいますが、ご自身が考える接遇について教えてください。
里岡 以前は「接遇」よりも「接客」という言葉のほう が、多用されていたように思います。それが、いつ頃からか接遇に変わってきたこと、そこにまず大きな意味があると私は思っています。接客の「客」という字をみると、どうしても先入観で直接的に自分たちにお金を支払ってくれる人、いわゆるカスタマーとかパッセンジャーをイメージしがちです。しかし、接遇というのは遭遇して接点を持つ人すべてに対して、おもてなしの気持ちを表すことだと私は考えています。まさに、人間関係を豊かにし、スムーズで円滑なコミュニ ケーションを実現する術。もてなす相手というのは、言うまでもなく自分とご縁のあるすべての方々なのだと思います。
兒玉 まさに、縁(えにし)ですね。人と人との出会いは、本当に人間の力では計り知れない縁の糸によって結ばれているのです。それらが、かけがえのない人間関係を形作っていく。「よりよい人間関係の中にこ そ、よりよい自分がある」というのが私のモットーです。自分が停滞していれば、それなりの人間関係しかできないし、自分が勉強して成長すれば、自分を取り 巻いて下さる人間関係の輪も素晴らしい方々との集まりになる…という意味です。だから、若い人たちには、どんどん出る杭になりなさいと言っています。出る杭になるためには、背伸びをすることが必要です。背伸びして、レベルの高い人たちともお付き合いしていくには、勉強して、また背伸びをする。これが大事なのだ。ということを、いつも繰り返し話しています。
今後の展望、自分の役割―日本と世界の国々の方々を比べたとき、どのような違いがあるとお感じでしょうか。
里岡 海外の人たちは多様性、多民族の中で暮らしています。自分の意見を言わなければ、誰も察してはくれません。兒玉社 長がおっしゃられていたように、出る杭になってどんどん出て行くのが海外の方。日本人は周りの意見を聞き、自分の意見を決めていきます。優しさ故のことな のですが、これだけグローバルな時代になると、このままでは日本の将来は明るくないと感じてしまいます。
兒玉 世界は、ますます狭くなっていきますので、里岡さんのおっしゃるとおりだと思います。
―ジャパン・クエスト・ジャーニーズ(JQJ)と、医療機関での接遇のお話をお聞かせください。
里岡 JQJは、私と2人のアメリカ人で設立した旅行コンサルタント会社です。パートナーの2人は以前日本に住んでいた経験があり、「日本には素晴らしい観光資源があるのに、海外の富裕層がなぜ旅行先に日本を選ばないのか?」という疑問を持っていました。理由は、正しい情報が発信されていないからです。英語圏の富裕層のお客さまに日本の魅力をPRし、日本の素晴ら しさを味わっていただくことがJQJの役割なのです。それから医療機関での接遇についてですが、私はいま精神科と認知症の病院で顧問をしています。特に認 知症の病院は、患者さんの人生の最期の場所になる可能性も高くなります。人間の尊厳を何よりも大切にした接遇を心がけるべきです。私自身の入院経験も活か しながら、病院の接遇のレベルアップの一助になれればと考えています。
兒玉 スヴェンソンでも先ほどお話したウィッグだけでな く、入院患者さまを支援するために必要なあらゆるアイテムをご提供できる通販事業を立ち上げています。衣類や化粧品はもちろん、様々な商品を取り扱っております。患者さまとそのご家族の気持ちになって、少しでも入院生活のサポートができればという思いを胸に、この通販事業を展開しています。
―最後に、お二人それぞれの抱負、展望をお願いいたします。
里岡兒玉社長の「強い自分をつくる法」を読み、本当に強い 自分をつくるには経験と努力、そして周囲の人からの支えがあって実現できることだと強く感じました。人の支えは、人間は弱くなったときに感じることが多い と思いますが、元気なときも忘れずにいたい。私も病気になったときに、自分の力になってくれる人がいることに感謝しました。今度は、自分が支える立場になり、ますます元気に頑張っていきたいと考えています。
兒玉 私は卓球を通じて「絶対にあきらめない心」、「思 いは叶う」「努力は才能に勝る」など多くのことを学びました。才能ある選手が努力を怠り、第一線から退いていく…。反対に、それほど才能を持たない選手が 努力を重ねて、チャンピオンになった例も私の教え子におります。「あらゆる才能の中で、努力し続けることができる才能が最も大事」、これが私の持論であり結論です。卓球を通して学んだものが、私の事業経営の根幹を成しています。これからも世のため、人のためにお役に立つ事業があれば挑戦してまいります。