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出会い・感動インタビュー

楽しんでやったことが本当に身につく、全て子供達から学んでいます。-北原照久さん

第8回のお客様は、キッズシティージャパンの住谷栄之資さん。3歳から15歳までの子供たちが、さまざまな職業を疑似体験できるキッザニアは大人気の施設です。仕事に触れ合って喜ぶ子供たちから多くのことを学ぶという住谷さんの言葉は、柔らかさの中にも強い信念がはっきりとうかがえる、分かりやすいものでした。職業体験を通じた子供の成長や親の意識改革、またそこでキッザニアが果たす役割をどうとらえているのか。平日も大盛況のキッザニア東京で、お話をうかがってきました。

北原照久さん/株式会社キッズシティージャパン 代表取締役社長兼CEO

1943年和歌山県生まれ。株式会社キッズシティージャパン代表取締役社長兼CEO。大学卒業後、藤田観光に入社。その後、大学時代の先輩と一緒にWDIを設立。「ケンタッキーフライドチキン」のフランチャイジーに続き、「トニーローマ」や「スパゴ」などのライセンスを取得して外食事業を展開。60歳で同社を退職後、「キッザニア」のライセンスを取得し2006年10月に「キッザニア東京」を、2009年3月に「キッザニア甲子園」オープンし、人気を集めている。

住谷 栄之資さん

 

―心が動く体験を

感情を揺さぶり心が動く体験をすることが、どんな人間にとってもなにより大事だと考えています。「子供が主役の国」 キッザニアでは、90種類以上の職業を疑似体験できますが、子供にとっては全てが初めてのこと。仕事に取り組んでいる子たちは楽しくて目を輝かせています。もちろんワクワクすることがほとんどとはいえ、ときにはドキドキしたりビクビクしたりすることもあるでしょう。考えてみれば、大人だって仕事や人間関係で、ドキドキ、ビクビクはありますよね?でも、それは決して悪いことだとは思いません。むしろ、とても重要なこと。いろいろなとらえ方があると思いますが、それだけ緊張感を持って生きているという証明でもあるのですから。そんな環境に自分が身を置いていられるのも、幸せなことですよね。もちろん張りつめてばかりでは疲れてしまいますが、ただダラダラと生きていることは、時間を無駄にしているのと同じです。

僕自身、そういう状況に身を置いて進むのが生きがいにもなっています。そして、何かを乗り越えたり達成したときに得られる充実感が、何事にも代え難い財産になる。だから、最初はビクビク、ドキドキでもいいんです。イキイキと行動したり、ワクワクと心躍る前にはそういう気持ちも必要だと思う。それがあるから、その先のハッピーにもたどりつけるんですね。

実際に、キッザニアの中でもそうした場面がありますよ。まず、子供は初めて触れ合う「仕事」という体験に、ドキドキしています。どうすればいいのかな、本当にできるかな、と不安な気持ちもあって当然です。仕事によってはビクビクすることもあるかもしれない。でもそれは子供だけじゃない。そのとき、親も一緒にドキドキしているんです。うちの子、他の子と一緒にちゃんとできるかな、と。各パビリオンの作業場には子供しか入れませんから、親は外で見守るだけ。子供は、自分で考えて行動するしかないんですね。でも、何回かやっているうちに最初の不安は消えてしまって次第に楽しくなり、イキイキワクワクとした気持ちに変わっていきますよ。子供が自分で学んでいくことが大事で、順番待ちのときから勉強は始まっています。隣には知らない子が並んでいるわけですから。そして、実際に体験するとき も他の子と一緒だったりする。最初は違和感がありますが、そのうち友達になれます。そういう場って、考えてみると今の世の中でほとんどないんですよ。学校、塾、家庭が点で結ばれていて、なかなか子供同士のつながりが生まれない。

好奇心旺盛でやんちゃ盛りの子供たちが大勢来るわけですから、キッザニアではいろいろなことがあります。ときにはトラブルが起こることもある。でも、子供にはいい勉強、ということを親も分かっているんです。安全安心をモットーにしていますが、防ぎようがない事態もある。本当の社会に出るための予行演習であり、準備なんです。だからこそリアル感にこだわっているし、心が動くような環境づくりをしています。

―全て子供たちから学ぶ

子供たちは、目の前のことをやってみたいから自発的に楽しんでいます。そして、次にやって来たときも、前回と同じ仕 事を選ぶんです。親にしてみれば、違うところに行けばいいのに、と思うのですが、子供は違います。それは、前回と同じ仕事をもっと上手くやろうとしている んですね。自分でハードルを上げて、高く設定した壁を登ろうとする。他の誰かに言われなくても、自分からそういう気持ちになる。この心構えができたら、その先の人生がかなり変わってくると思いませんか。

各業界から、それぞれスポンサー企業のパビリオンが入っていますが、やはり人気があるのは食べ物系です。ハンバーガーショップではハンバーガーの作り方が書いてありますが、読むのと実際作るのとでは違いがある。ハンバーガーのバンズってこんなに柔らかいんだ、とか、火が熱いことを、身をもって覚えるんです。そんな体験を、より多く心に内蔵することが大切です。

そんなことも含めて、僕は全部子供から学んでいると言ってもいいかもしません。キッザニアを始めてから気付いたことも多い。それまで、長年外食産業に携わってきて感じたのは、人は大人になってからでは、なかなか変われないということ。社員研修などで新卒の若者 たちを多く教育してきましたが、やはり20年以上染みついてきた振る舞いや考え方は簡単には変わりません。やはり、「三つ子の魂百まで」なんですね。風 景、味、匂い、言葉……誰しも、小さいときの記憶は強く残るものです。それも、自分で感じたり見聞きしたことを自然と吸収しているんですね。無意識の中 で、その人の人格形成に影響を与えているんだと思います。押しつけで物事を教えては、そうはいきません。親は、上から教えることで子供が学んでいくと錯覚しがちですが、本当は違うんですね。自分が教えてやらないとダメなんだ、という上から目線は、捨てた方が子供にとってもいいのです。

「なんで?」、「どうして?」という質問は好奇心の塊。それがなくなるのは、成長が止まるのと同じことです。親はそれをせき止めてはいけないし、僕はそんな可能性を広げるチャンスをどんどん提供していきたいですね。

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