出会い・感動インタビュー
こころのあり方が遺伝子までも動かす 利他精神にスイッチONする、
見えない存在「サムシング・グレード」。-村上 和雄さん
村上 和雄さん/筑波大学名誉教授
1936年生まれ。筑波大学名誉教授。63年、京都大学大学院農学研究科農芸化学専攻、博士課程修了。同年、米国オレゴン医科大学研究員。76年、バンダビルト大学医学部助教授。78年、筑波大学応用生物化学系教授となり、遺伝子の研究に取り組む。83年、高血圧の黒幕である酵素「レニン」の遺伝子の解読に成功、世界的な業績として注目を集める。96年、日本学士院賞受賞。『生命(いのち)の暗号』『人生の暗号』『生命(いのち)の暗号(2)』『サムシング・グレート』『アホは神の望み』(いずれもサンマーク出版)、『そうだ! 絶対うまくいく!』(PHP)、『スイッチ・オンの生き方』(致知出版社)、『人を幸 せにする「魂と遺伝子」の法則』(致知出版社)『今こそ日本人の出番だ』(講談社)など著書多数。
サムシング・グレードとの出会い
―村上先生は世界で注目される科学者のお一人ですが、遺伝子情報の研究現場のお話をお聞かせいただけますか。
今や、遺伝子の解読についてはものすごく研究が進んでおり、まもなくひとりの全 遺伝情報が10万円で、しかも一日でそれを解読できるような時代になりました。技術の進歩はそれほど加速しています。例えば、自分の必要な遺伝子情報を取 り出し、ICチップに入れて、それを病院に持って行くと、「あなたに必要な薬はこれです」「あなたにはこのような治療が必要です」など、個別化医療が可能 になる時代に入りました。それくらい進歩しているんです。そういう中で僕たちもたくさんの遺伝子暗号を読んでいたんですよ。稲だけでも全部で1万6000 個もの遺伝子がありました。研究チームの中で若い人たちが頑張ってくれてその成果があがったんですが、多くの学者が経験していますが、研究という世界は、 「勝つか負けるか」1位のみを競い合う世界なんですね。だから金メダルしか世に出ることはできない。それが実情なんです。2位以下は、「はい、ご苦労さんでした」と言われて、陽の目を見ることはありません。
あらゆる存在には、親の親が存在する。
それが「サムシング・グレード」―神さまではなくサムシング・グレートと名付けられた理由はなんでしょうか。
先ほども言いましたように、それは解らないけれども、「人間の叡智を越えた大自然の力としかいいようのない存在」という意味で、サムシング・グレートと 10数年前に名づけました。なぜ英語かというと、自分が英語が喋れることを見せびらかせるのではありません(笑)。私は留学をしていたので英語は少し解る のですが、一番には、欧米の人たちに解ってほしいという思いがありました。それともう一つには、日本には八百万の神といいつつも、一方では「神も仏もある ものか」という人も多く、その人たちにもできるだけ理解してもらいたいと思っていました。「ところで、サムシング・グレートって何?」と聞かれるんです が、そういう時にはこう言うんです。「そんな難しいことは、私に聞いてくれるな、解らないから“サムシング”と言ってるんだ」と(笑)。
しかし、そうはいいつつも私なりに定義をする必要もありまして、それは非常に簡単なことです。私たちには親がいます。間違いないですよね。親にはそのまた 親がいました。これも間違いないですね。それを辿っていくと、生き物は皆、親の親のようなものがないと、子どもは生まれてこないんですね。すべての生き物 の存在の元になるもの、それをサムシング・グレートと定義しているんです。
―この呼び方であれば、どのような分野の人たちにも認識しやすいですね。
そうですね。それでその後、サムシング・グレートという言葉もわりと一般的にも知られるようになり、そろそろ「商標登録」を取った方が良いのではないかと 言われることもあります。例えば“ホテル・サムシング・グレート”とか(笑)。いやこれは冗談ですが、そういうことを通じて、一般の人でも、「ああ、遺伝 子の暗号を書いた人があるんだな」ということに気づいてくれるようになることが、私にとって一番嬉しいことですね。日本人は、「宗教」に対する悪い印象が 多いですからね。でも、サムシング・グレートという言葉だと誰もがスッと入れるんですよ。ちなみにマザー・テレサは、“サムシング・ビューティフル”と 言ってました。「不思議なもの」とか「偉大なもの」といった意味。それは、彼女の美しいものに対する感性の高い表現だと思います。
―同じ科学者や医学の分野の方々の反応はいかがでしたでしょうか。
サムシング・グレートという言葉には抵抗がないですね。学者というものは皆、研究すればするほど自然の不思議さや偉大さを感じていくもので、科学者もある 意味、信仰者なんですよ。で、それは何を信じているかというと、「人間の体の中には宇宙の法則性がある」ということ。それは決してでたらめなものではなく、宇宙や太陽系、地球の活動とも同じで、寸分のくるいもなく動いている秩序正しい法則性があるということを知っているんですね。しかし、それがあるかな いかといえば解らない。けれども「ある」と信じて研究を続けるわけです。科学の大本は本来は哲学で、それがどこから来ているかというと神学ですからね。神様が創造された宇宙や生き物がいかに素晴しいかということを科学用語で証明していく、これが本来の科学の原点です。科学だけではなく哲学も、音楽、芸術、 文学など、全てがサムシング・グレートからきているんです。
遺伝子は、こころのあり方ひとつで動く―殆ど使われていない遺伝子をどうしたら「スイッチON」できますか。
それについては登山家の三浦雄一郎さんの事例を紹介します。あの方の業績は人類の限界に挑戦したということです。2年半くらい前に彼の自宅にインタビュー に行きました。当初、2時間の予定のところ話が弾み8時間になりまして、途中で食事を出してもらったり、半分遊びのように楽しんだのですが、非常に居心地が良かったです。あれだけの偉業を果たしたにも関わらず、75歳で、再度5年後に3度目のエベレスト登頂を決心。そして2013.5.23実現したあの意思とパワーはどこから来るのか、非常に興味がありました。
三浦さんが特別な遺伝子を持っているというわけではないんです。心の強さなんですね。その心のあり方がスイッチをONにする。過去に60歳くらいで半分引退したとき、ブクブク太ってメタボになった。そして裏山にも登れなくなり。自分自身が、もうこれでいいと思ってしまったら500mも登れない。「こんなことではダメだ」と思い、70歳での2度目のエベレストを決意したんです。
スイッチONにするということは、「決心」するということなんです。一度決心をすると、自らトレーニングを始めます。外出するときは20キロのバックを背負い、足には5キロの鎖を巻いて。それで歩く、まるで拷問です。でもそれは目標を立てたからできる。トレーニングによって体のスイッチがどんどんONになっていくんです。
―その他に何か方法はありますか。
やはり三浦さんの例になりますが、彼の場合はエベレストに「惚れてる」んです。惚れなきゃあんなことやれるはずがない。惚れて飛び込むからこそ山が応援し てくれるんですね。人間は人でも仕事でも惚れるほどでないとダメだということですね。だからいつも皆さんに聞くんですよ。「あなたは人に惚れてますか?」「仕事に惚れてますか?」と。あなたのためなら死んでもいいと思えるパートナーや仕事などに出会えるのは最高です。
再度まとめると、「決心」と「トレーニング」そして、「対象に惚れこむ」こと。あとは、「食事」も大切です。お肉も食べてもよいですが、半分はお魚にしたり、納豆や味噌汁などの日本食やビタミン摂取の仕方も影響します。どんな人でも遺伝情報は99.5%は皆同じです。いつからでも偉業を遂げることができることを知らせたいですね。
その他に何か方法はありますか
やはり三浦さんの例になりますが、彼の場合はエベレストに「惚れてる」んです。惚れなきゃあんなことやれるはずがない。惚れて飛び込むからこそ山が応援してくれるんですね。人間は人でも仕事でも惚れるほどでないとダメだということですね。だからいつも皆さんに聞くんですよ。「あなたは人に惚れてますか?」「仕事に惚れてますか?」と。あなたのためなら死んでもいいと思えるパートナーや仕事などに出会えるのは最高です。
再度まとめると、「決心」と「トレーニング」そして、「対象に惚れこむ」こと。あとは、「食事」も大切です。お肉も食べてもよいですが、半分はお魚にした り、納豆や味噌汁などの日本食やビタミン摂取の仕方も影響します。どんな人でも遺伝情報は99.5%は皆同じです。いつからでも偉業を遂げることができることを知らせたいですね。
神さまは威張っている人がキライ―サムシング・グレートが好む人という条件は何かありますか
僕はいろんな人と出会ってきて「ほんまもん(本物)」と思う人は威張っていないんですね。ほんまもんかどうか見分けるのは威張っているかどうかなんです。まあ中にはちょっとは本物もいますけど(笑)。ダライ・ラマが良い例です。彼は世界中のいろんな人々に会ってきていますが、どんな人にもフレンドリーで す。僕に「あなたは有名な科学者で素晴しいことを言うけれどもう少し笑った方がいいと耳をコチョコチョして笑わせたりね(笑)」。
少しくらい成功したとか偏差値が高いとか問題にならない。あまり大したできではないけれど、一生懸命努力している方が親は可愛いんですよ。「オレはエライ」とかいっても人間の知恵はたかがしれています。謙虚になっている方が親は可愛いものです。
以前、「アホは神の望み」という本を書きましたが、スティーブ・ジョブズは、“Stay Hungry!”=「ハングリーであり続けろ!」そして、“Stay Foolish!”=「アホであり続けろ!」と言ったワケです。人間はハングリーでい続けると自然とスイッチONになるんですね。あまりお腹いっぱい美味しいものばかり食べ続けていてはスイッチはONになりません(笑)。私たちは数値化できるものやお金に換算できるものを大切にするけれども、現代社会は、愛情、心、命など、眼に見えないものを軽視し過ぎているように思います。
科学者としてサムシング・グレードを証明したい
―吉本興業と組んで笑いが遺伝子に影響するという結果を出されたとお聞きしましたが
僕は「心の働きが遺伝子にスイッチONする」と言っていますが、それを証明したいと思っているんです。しかし「心というのは何ですか?」といった場合非常に難しいんですよ。例えばストレスが加われば病気になる。多くの場合はそれが原因になっているんですよ。そのストレスはネガティブなんです。しかし世の中にはポジティブもネガティブもあるので、ストレスにも必ずポジティブもあるんじゃないか。そんなふうに発想を変えてみたんです。そしてネガティブなストレスで病気になるのであれば、ポジティブなストレス(楽しい、感動、感謝)を与 えたらイキイキして病気が治るかも知れない。そんなことを考えていたときに、吉本興業の社長と会うんです。これも不思議な出会いでした。朝食会で講演した 後、隣の席で「先生の話しは面白い」と。「笑いのプロに褒められたら僕も嬉しいです」と言うと、「イヤ、大学の先生にしては面白かった」と言って大笑い。それで、笑っているときというのはストレスを解放してるので、もしかしたらそれは、ポジティブなストレスではないかということになったんですよ。
―その後はどのようになったのでしょうか
話しがトントンと進み、早速「糖尿病の患者さんたち」に2日間の実験で、一日目は食後に大学教授の講義を40分間聞き、血糖値の検査をしたら、なんと食前 に比べて平均で「123」も上昇。これは予想以上だったのでみんなビックリして、「やっぱり大学教授の話は健康に悪いんだな」と(笑)。そして2日目には、吉本のタレントでB&Bの島田洋七さんのお笑いステージを40分間、同じ時間帯に観賞してもらったんですね。すると患者さんたちの血糖値上昇は平均「77」。「大学教授の講義」と「お笑い」による血糖値の差が「46」もあったんですよ。で、この実験結果を糖尿病医に報告すると、殆どのお医者さんは「そんなアホみたいな実験はとてもまともな医者はしません」と(笑)。しかし、当事者の糖尿病患者さん自身はビックリです。次の月にはアメリカの糖尿学会 に私どもの検査データが発表され、それをロイター通信とNews Weekが取り上げてくれて、世界中に発信してくれました。
―このお話も画期的なものですが、今後はどのような展開の可能性があります
自分で言うのも変ですが、この笑いの研究は世界中が注目すると思います。なぜかといいますとね、この研究が進んでいくと、薬に変わってお笑いビデオ (DVD)が流行り出すかも知れないですからね。先生が治療するときに「それでは薬の代わりにこのビデオを見てください」とか言い始めるかも知れません(笑)。しかし、薬の“代わりに”ではなく、薬と“共に”へと展開していきます。実は日本のある大手製薬会社の会長も、ご自身は「薬は飲まない」と言うんです。「オレは自然治癒力で治すからお前たちは飲め」と。なぜかというと、この会長は薬には副作用があることをよくご存知だから。私も「副作用のない薬はない」と思っています。もし副作用のない薬があるならば、それは効かない薬(笑)。
―非常に興味深いお話ですが、もう少し具体的にお聞かせいただけますでしょうか
アメリカではね、年間10万人もの人が薬の副作用で亡くなっています。10万人ですよ・・・。ですから、“笑いセラピー”を取り入れて、「どの遺伝子が、 どう健康に影響を与えるか?」ということを研究してみようと思うんです。今年3月にはネズミを笑わせる実験をし、博士が誕生しました。ホントに笑ったかどうかはネズミに聞いてみないと解らないですが(笑)、胸のところをコチョコチョとくすぐると、ネズミが「気持ちがいい!」と反応するんですよ。専門的に は、50kHzの超音波を出します。実はこれが笑いの原型だと言われているんです。ちなみに「イヤダ」という反応は20kHz。このようにネズミを使って、「心と脳の遺伝子がどのような関係を持っているか?」ということを研究しています。