出会い・感動インタビュー
これからの時代ではさらに遺伝子研究も進化―吉本興行との「お笑い」の共同研究の次はどのような研究でしょうか
アメリカは、西洋医学のメッカですが、すでに西洋医学だけを信じている人は5割を切っています。高血圧や癌や糖尿病も西洋医学だけでは治らないんです。ある程度抑えることはできるのですが、原因が解らないことが多すぎる。だから西洋医学の限界を感じているんですね。統合医療や自然療法、中でも最も人気が あるのが「祈り」という療法なんです。「祈りが治療効果を高める」ということが、医学雑誌に載り始めています。しかし、これは実験条件が難しいのでまだ賛否両論ありますよ。しかし「祈り」という、一見医学のフィールドとは全く関係のない、そういう世界に科学のメスが入ろうとしているのは事実です。今はも う、そういう時代なんです。だから僕たちも、瞑想とか魂と遺伝子とか、そういう分野を研究する時代に入っているわけですね。
そのような中で、再来年、弘法大師が高野山を開いて1200年を迎えるのですが、それにからめて吉本の「お笑い」ではなく、もっと深い心、「祈り」とか「魂」という世界と遺伝子がどのように関係するのかを、今後10年計画で、仏教家や心のはたらきの専門家と組みながら研究しようとしています。もちろん、ヨガの瞑想やキリスト教の祈りなどもOK。要はそういうもののはたらきで遺伝子のスイッチがONになることに、どのような因果関係があるのかを立証したい のです。
これからは西洋医学だけで病気は治らない―現代の医療や科学の現場の実状につてお話をお聞かせください
今までは、科学者が「祈り」などと言うとね、「それは科学じゃない」「あいつはおかしいんじゃないか」などと言われてたんですが、もう科学や医療がそこに 踏み込まざるを得ない時代になったわけですね。先ほどの三浦雄一郎さんの「決心」も、「祈り」の世界に通じるもので、結局天というか、サムシング・グレー トの意志に通じていく道だと思います。
東大病院の矢作直樹先生という方の本にも書いてあるのですが、東大の医者の身内を東大病院には入れないというんです。それはなぜかというと「東大病院とい うのは研究するところで、本当の意味で患者のためになっているかどうか解らない」と。そして、「今はそうかもしれないが、将来はそうでない病院にしたい」と言われてました。今のお医者さんたちは、西洋医学に限界を感じているんです。だから、科学も医学もこれから少しづつ変わっていくと思います。ただ、まだ まだ主流ではないですが、東洋医学や針灸マッサージ、自然療法、アロマセラピーなど、そういう分野にもどんどん光が当たっていくと思います。「人は物質の みでできてはいない」ということが解ってきたんでしょうね。これまでの医療では、「結局、生き物は物質だけでできている」と考えてきたんです。それでは細 胞ひとつを考えるときも、臓器や体全体というものをつながりがなく捉えられない。一つの臓器は治せるけれども、人間そのものを治すことができない訳です。「人間とは何か?」これを知ることができないんですね。大きな意味で「何かあるんじゃないか?」と皆が思ってきたんだけれど、それが何かは解らなかった。 その理解に科学の分野が少し役立つ時代になってきたんだと思います。
「21世紀は日本の出番だ」と言われたダライ・ラマ―親交の深いダライ・ラマさんとのエピソードをお聞かせください
彼は、宗教的な直感だと思いますが、「21世紀は日本人の出番だ」と言いました。
最初はホントかなと思いました。日本の新聞やマスコミを見ていると、とても出番だとは思えないようなことばかりなので・・・。それで私は科学者なので、世 界が日本をどう見ているのかを早速調べてみたんです。2012年の調べで、なんと日本は「1位」です。世界に最も良い影響を与えている国なのです。外国の 眼から見ると日本は何よりも「平和国家」だということ。そして科学技術の水準も非常に高い。そして21世紀に入ると、日本のノーベル賞受賞者は全ヨーロッ パ地域を合わせた数よりも上回るんですよ。1位はアメリカですが、ドイツ・イギリス・フランス・イタリーを合わせても単独で日本が上回っている。これはす ごいことです。また技術水準の高さ、これも世界的な定評がある。医療水準、教育水準も高い。加えて、ダライ・ラマが言われた言葉には、「日本は、何より大自然を敬う心や、和を尊ぶなど、“精神の豊かさ”が千年もニ千年も続いている。そういう善き歴史と伝統を誇りながら、あらゆる水準を保てる国は日本だけ だ。だから日本は今こそ出番なのだ」と強い期待がこめられていたんです。
僕は、日本人自体に自覚が欠けると思っています。日本人が俺たちの出番などと思っていない。特に若い人たちが自信をなくし、みんなが自分はダメだと思って いるんですね。だけど、これだけの伝統を持っていてね、日本がダメなわけがないんですよ。だから私は「教育」だと思っており、「日本の伝統とかを、再度、 ちゃんと理解して、自分の国にもっとプライドを持つような人を育てないとダメだ」と。先生や親も同じです。それで、全日本家庭教育研究会というのがあり 今、そこで総裁をやっています。経済ももちろん大切ですよ。しかし、経済そのものは、これ以上永久に伸びるわけはない。地球規模での資源も限られている し。「貧しいけれども分かち合って生きる」という本質的な精神と社会のしくみがないと解決しないんです。
今、もしも世界中が物質主義の米国のような生活をしたら完全に破綻しますよ。だから日本人が本来持つ「つつましさ」とか「分かち合い」とか「大自然の営み に感謝する」。そういう“生き方”を世界に向かって示すこと、そんな“生き方”のお手伝いとして、私は「サムシング・グレイト」を伝えたいと思っています。
8月26日(2013年)、経団連会館で一緒にシンポジウムに出演しましたが、横浜国立大学名誉教授の宮脇昭さんも素晴しい方ですよ。世界中に4000万 本もの植林をされています。又、東京大学名誉教授の山本良一さんは、「このままいくと、20年で世界は崩壊する」と言っています。産経新聞の正論「祈りは 生命の宣言である」という記事で私のことが取り上げられたり、映画『祈り』も一年間ロングランで上映されていることからも解るように、もう本当に“みんなの気づき”の歴史的転換期なんですね。そういう意味で今は非常にエキサイティングな時代です。
遺伝子も他のために生きている。スイッチONの秘密は利他の精神―
最後に、これからの社会があるべき姿また、どのようにしたらサムシング・グレートに近づけるかお教えください
人間は自分のことを優先する“エゴ”というものがあって、それを「利己的遺伝子」という言葉を使うのですが、私は「利己」だけでは生きられないと思ってい ます。それはなぜかというと、細胞のはたらきを見ると助け合っているんです。細胞同士が。助け合わなければ臓器の働きが機能しないんですよ。臓器そのもの が働きながら他の臓器も助ける。そのように臓器同士が見事に助け合っているんです。こういうことはでたらめにはできません。だから私は、遺伝子は、「他の 生き物を生かす」という調和的で利他的な目的を持っているのではないかと思っており、21世紀中には見つかりだすと思います。そうすると身体そのものが “エゴ”では生きられない。エゴの代表は癌遺伝子ですが、自分たちの遺伝子のコピーをやたら作るわけです。そのために周りの臓器が死んで転移する。そこで もまたコピーをたくさん作る。そうすると臓器が死んで、最後には個体が死んで人間自体が死ぬ。これが「利己的遺伝子」の成れの果てです。強いものが生き残 る。それは、あるときまでは続きますが、結局、そういう考え方はお互いを食い合い、殺し合うことになる。自分を犠牲にしてまでとはなかなかいきませんが、もらったものはお返しをするとか、自分が死ぬことで周りを生かす。そうなっているんです。それが、“自然”というもので、人間もそのように心のあり方を変 えていくことでサムシング・グレートに近づいていくのだと思います。